「古期ドイツ語作品集成」
高橋 輝和
定価: ￥ 8000

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【初めに】
この作品集成には、ドイツ語史・文学史の最古の段階をなす、西暦500年頃から1100年間までの時代における低地ドイツ番と高地ドイツ時の諸方言による全ての作品が収録されている。

ただし大作はその主要な部分に限定され、意味不明の断片的なものは取り上げられていない。
古期ドイツ語の全体品をまとめるに際しては極力、原本や写本の写真を入手して原文の校定を行い、場合によっては原文の復を行ってある。そして随所に新しい読み方や新しい解釈を呈示し，出典の明示，解説，詳細な注釈をつけ、言語学的に正確な和訳を添えてある。
古期ドイツ語の作品では複数の方言形が入り混じっていることが多いので、そのような場合には用いられている主要な方言形に基づいて方言の認定がなされており、さらに原則として現存写本の語形によって年代の認定がなされている。ただし後代の写本であっても、原本の古形を保持している場合は、原本の作成年代を採用してある。
私はこのような作品集成によって中世初期の古期ドイツ語時代の言語文化の諸相と特色を明らかにすることを意図している。巻末の作品分類を一瞥すると分かるように、この時代には世俗の多種多様な実用文書も作られているが、この時代の作品の大半は聖職者によるキリスト教関係の文書や宗教的な文作品であって、「ドイツのキリスト教化」を目的としている点に最大の特色がある。
「ドイツのキリスト教化」という目的のために、この時代の作品ではラテン語とドイツ語が混用されていたり、ラテン語の翻訳としてドイツ語が書かれていることは珍しくはない。本書ではラテン語の部分は斜体で示し、訳文中ではラテン語に対応する部分を片仮名で示してある。
［以下略］