シューマン

①フモレスケ 作品20

②子供の情景 作品15

③クライスレリアーナ 作品16



ラドゥ・ルプー（ピアノ）

録音：1993年1月スイス



ルーマニア出身のラドゥ・ルプーによるシューマンです。贅沢な組み合わせで聴きたいとお考えであれば、是非手に取っていただきたい名盤です。「千人に一人のリリシスト」と言われるルプーの天性の繊細さと共に、非常に強靭な打鍵による（端正さを失わない）ダイナミズムも確りと持ち合わせており、シューマンの浸り切らない独自のロマンティックな抒情性と、激しい情感の迸りの両面を余す所無く表出している。ロマンティシズムを叙情的に歌い上げるルプーの旋律は、色彩豊かでありつつもどこか憂いや儚さを帯びています。内側で光が反射するような透明感を備えた弱音は、まるで泡沫のよう。華美にしすぎずに色鮮やかな演奏を聴かせてくれるあたりはルプーならでは。



このシューマンは、音色がどうの、というレベルではなく、１音１音が完全に音楽を形成しており、奥行きの有る音場感と相俟って、想像を超える思慮深さを携えている。これは内田光子等のアプローチにも言える事で、柔軟で繊細、端正であり、純粋に音楽的に情感的に鳴る。その驚きは多分に技巧的な要素もかなり影響していて、ルプーほどの究極的にリリカルなテクニックで奏でられたシューマンを、今まで聴いたことがなかったに起因するのだろう。



シューマンのピアノ曲の美しさをいささかの嫌みもなく、安心した気持で満喫できる。もちろん、抒情豊かさだけではなく、フモレスケの第５曲や、子供の情景の大事件、竹馬の騎手などにおける力強い打鍵による迫力においても、いささかの遜色はない。クライスレリアーナは、圧倒的に突き進む感じが良い。最後は救いを求めるようなコラールが響き、終曲へとつながる。最後まさに消えいらんとする弱音のなんとも恐ろしく凄まじい。



ルプーのピアノに絶対キツイ音は出さない。どんなに激しいフレーズでも暖かい音でくるみ込んでいる。それでも物足りなさを感じさせない所が凄い。一つのやり方も極めれば絶対的な価値を持つ。



国内盤【廃盤】帯無し、盤面傷無し



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