上下二段の引出しが収納された木製手提げ小箱です。



美しい木地に透けた生漆を摺るように塗って木目を際立たせる漆塗りの技法「摺り漆（すりうるし）」による仕上げ、材質は木目（板目）の美しい欅（ケヤキ）ではないかと思います。

金具は銅や銅合金（黄銅など）などでは。天板には持ち手金具が、前扉には輪っかの引手金具、扉を開くと、２段に引出しが、上段は小振りの通常の形の引手金具、下段は凝った引手金具で下の半円を折り上げツマミに。



元々は、明治～大正時代に指物師（家具職人）の手により製作されたものだと考えられますが、後年、①前扉と受具、②右側面板、③下段引出しに手が加えられた（修繕）跡が見られます。下に説明します。

【①】写真２の前扉中央の割れ目は元々のもの、中央部、上部、下部の木目が合わず一枚板ではない、写真４の裏面に別の一枚板が貼付け、写真１０の左側面板手前の前扉受具の除去跡⇒前扉は取替られたのでは。

【②】写真１０、１２、１３から、右側面板は天板、底板との前側の嵌込部に浮きあり（左側面板に浮きなし）⇒前扉取替時の影響では。

【③】写真６の前板取付けが上下段で異なる、写真１１の上段の奥行きが短い、写真１０の奥の当止め⇒上段引出しは作り変えられたのでは。



箱外面の汚れはそれほどありませんが、箱内部や下段引出し内側の汚れや筆跡が見られます。天板、側面板、底板には線キズが見られますが、目立つような欠けやヒビ、割れや変形、ガタツキなどはほぼありません。

なお、上段引出しの向こう板に欠けた（人為的に欠いた？）個所が見られます。また、一部金具に、外れませんが、グラツキが。



大きさ（㌢）重さはおよそ次の通りです。引出しは内寸です。

箱体：横幅１５、奥行２６、高さ１３．５／

上段引出：横幅１２．５、奥行２０．２、深さ３．４／

下段引出：横幅１２．２、奥行２１．７、深さ５．２／

全体重さ：１２００㌘／



骨董の二段の引出しが収納された「摺り漆」による美しい板目が現われた木製手提げ小箱です。指物師により製作されたものと考えられ、凝った金具も使われています。何ヶ所かに手が加えられた（修繕）跡が見られますが、板目や金具の良さは十分に残されており、時代物骨董置物兼小物入れとして活用していただけると思います。